「水アイロンとパパパンの狭間で」
~グローバル人材と共感力~

この記事を書いた人✐新谷典子

グローバル人材って?

私は日ごろ、企業や学校法人にグローバル人材育成プログラムをご提供しています。「グローバル人材」ときくと、外国語に堪能であることがもっとも重視されることだと思われるかもしれません。はたしてそうなのでしょうか?

人材育成の指南書として上梓した「人材を『人財』にアップデートする新しい手法と5つのポイント」(ダイヤモンド社刊 田中隆司 新谷典子 共著)にも述べましたように、「グローバル人材」とは単に外国語に堪能であるという意味ではありません。もちろん、外国語を巧みに操れることは必要な条件のひとつですが、それがすべてではないのです。

「共感力」が高いことこそ、グローバルな人材の重要な要件ではないでしょうか。マイクロソフトのCEOサティア・ナデラ氏もアップルのCEOティム・クック氏も折に触れて「共感力」の大切さを語っておられます。 相手の視点をを理解し、感情を慮り、寄りそう「共感力」は、「グローバル人材」の重要な要件である前に身近な家庭生活においても、育み、発揮してゆきたい大事な力です。「共感力」の大切さについて、私は、ある時、知人のお子さんのエピソードから学ばせてもらったことがあります。

ご紹介しますね。Sさんのご家庭での出来事です。

水アイロンかパパパンか

Sさんは私(新谷)と同様、一男一女をもち、姑さんとも同居する40代の働く母です。ある日Sさん宅でこんな出来事があったそうです。

Sさん家において、脱水後の洗濯もののしわの伸ばし方をめぐっての嫁姑バトルが勃発。

水アイロンがいちばん。いちばん綺麗にしわが伸びるから板の上に一枚ずつ重ねてしばらく置きなさい。

嫁(Sさん)

そんな悠長なことやっておれません。こんな風にシャツも思いきり30回ほどパパパンと振ったら、しわなんてきれいにのびます、それかぱんぱんたたくのが一番はやくて綺麗。

お互い、譲らず。しまいには「どっちのやりかたがきれいにしわが伸びてるか判断してもらいましょ!」と息子(Sさんの夫)が審査員にかりだされ、板挟みの憂き目に・・・・。

「さあ、どっちを選ぶの?・・・水アイロンかパパパン」

水アイロン(姑)とパパパン(Sさん)の狭間で、バトルは洗濯物のしわの伸ばしかたにとどまらぬ重い意味をまとってきたのです。
Sさんの夫は窮地に立たされました。水アイロンかパパパンか、母か妻か・・・どちらを選んでも、大変な結末になりかねません。

そこへSさんの小学生息子D君が登場。「おばあちゃんも、お母さんも、いつも洗濯してくれてありがとうね。僕、お年玉で乾燥機買ってあげる。そしたらしわの心配しなくていいしね。なんぜんえん(何千円)かで買えるのかなあ・・」

Sさんも姑さんも、顔をほころばせ、バトルは終了しました。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

共感力でハッピーに

このSさんのご家庭でのエピソードを通じての学びは、小学生D君が、共感力を発揮したことです。
A案(お祖母さん水アイロン案)か、B案(お母さんパパパン案)か、という形のうえでの二択にとらわれず、お祖母さん、お母さん、双方の努力に、寄りそい、気持ちを慮り、感謝とともにいじらしい解決案を提案したD君の登場で、嫁姑の対立ピリピリ感は転じて、優しくかわいい孫(息子)を持った身内同士のハッピー感に、包まれました。

家庭での共感力の発揮→社会での共感力での発揮→グローバルでの共感力の発揮

とつながってゆくので
と身近なところから共感力を育ててゆきたいものです。


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この記事を書いた人

新谷 典子

Noriko Shintani
株式会社ヒューマン・ブレーン 執行役員兼国際事業本部長

経営者、後継者、医師、管理職のコミュニケーション、スピーチ、プレゼンテーションアドバイザーを務めるほか、メガバンク向け研修に講師として登壇。