【トンボの羽から新型ドローン?】生物模倣の考え方からアイデアを創造する
この記事を書いた人✐横山悠規
みなさんは「生物模倣技術」というのを聞いたことがあるでしょうか。これは、生物の構造や機能をから着想を得て、新しい価値を創造する科学技術のことです。今回は、この生物模倣をヒントに、創造的なアイデアを生み出すことについて探っていきたいと思います。
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トンボの羽をヒントにした新型ドローン
まずは「生物模倣技術」によって生まれたアイデアの例を見ていきましょう。
災害救助や配達など、様々な分野で活躍が広がっている無人航空機ドローン。折れ曲がっても壊れない新しいプロペラが、北陸先端科学技術大学院大学と米ニューヨーク大学の共同研究で2020年に開発されました。
これは「トンボプロペラ」と呼ばれ、人や障害物にぶつかったときに、羽が折れ曲がり衝撃を吸収することで、破損事故の可能性を軽減することに成功しました。また、折れ曲がった羽はすぐに元に戻るため、引き続き稼働が可能です。安全なドローンが求められる中、画期的な発明となりました。その名から推測できるように、このプロペラはトンボの羽構造からヒントを得て開発されました。
生物模倣技術とは?
先の例にあるように、動物や植物などの生物の生態や行動をヒントにして、技術開発を行う手法の総称が「生物模倣技術」で、バイオミメティクス(biomimetics)、バイオミミクリー(biomimicry) とも呼ばれます。
私たちの生活に関わりのあるいくつかのものは、この考え方を通して誕生しました。例えば、日本の新幹線の形状やマジックテープの構造、集合住宅の換気はそれぞれ、鳥のくちばし、 くっつき草、シロアリの巣をヒントに作られました。
地球の生態系全体を教科書と捉え、化石になっているものは失敗例、現在も生き残っている自然界のものは成功例として、技術開発に応用しています。生態系の維持に適応できている特徴から、 新商品の開発だけでなく、持続可能な開発への有効手段としても注目を集めています。
課題解決策としての生物模倣の可能性
では、この生物模倣をどのようにアイデアに繋げられるでしょうか。その方法の1つは、動植物に関する自身の体験を、些細な事であっても気に留めることです。
例えば「蚊に刺される」という体験。その強烈な痒さから、後になって刺されたことに気づきます。この体験をアイデアにつなげた事例があります。蚊の針をヒントに誕生したのが、痛くない注射針です。
このように、ちょっとしたいつもの出来事を気づきの機会とすることで、新しい発見があるかもしれません。水に潜っても濡れないカワガラスの羽毛をヒントにした「津波に巻き込まれても低体温症にならないスーツ」。壁をつたって移動できるクモの足をヒントにした「縦・横にも移動できる車両」。90分間無呼吸で潜行できるクジラの特徴をヒントにした「感染症予防マスク」。実現可能かどうかはさておき、今までにないアイデアが生まれるような気がします。
生物模倣という考え方は、今後様々な課題の解決をしていく上で、またイノベーションを創出していく上でのヒントになりそうですね。 皆さんも是非、いつもの日常を見つめてみてください。意外と身の回りにイノベーションの種が転がっているかも知れません。