天王寺区の中学生を対象とした即興型英語ディベート
2015年1月25日 大阪市天王寺区民会館
<<前ページへ戻る両者接戦だった本ディベート。
「Opposition」チームも分かりやすい反論を何度も繰り広げていたが、POIの時に時間オーバーとなり、反論が無効になってしまったこと、それから反論の裏付けとなる例題や状況説明が足りず、ジャッジの理解を深めるまでには至らなかった。また、自論を述べながらも、矛盾点が生じてしまったのも惜しい点だった。
対して「Government」チームは、「中学生のうちに働くと責任感やリーダーシップ能力がつく」と終始述べていたが、その理由と、働くことによって得られる具体的な影響力・実際どんな風に役立つのかを述べられれば、今後飛躍的に伸びであろうといった講評だった。
——このイベントを開催するにあたってどんな思いがありましたか?
まずはじめに、英語の力を伸ばしてあげたいと思いました。日本で問題になっているのが、中学・高校、長い子で大学まで、英語を勉強しても会話ができない。文法は分かっていても会話ができないという子がすごく多いという話を聞いていて、やっぱり会話に慣れて欲しいという思いが一番強いですね。
これからグローバル社会になっていくことに対しても、プレゼンテーション能力だとか、自分の言いたいことを言える能力、それから自分の意見を持つことがすごく大事になっていくのかなと思います。
高校生や中学生という頭の柔らかいうちに、「自分ってこういう考え方ができるんだ、こういう意見を持っているんだ。周りの人ってこんなことを考えられるんだ」と、違う視点でも見られるようになると思います。自分の意見を言うことだけでなく、相手の意見を聞くこと、それに対して反論することってかなり大事なのだと思います。苦手意識をなくして、英語でコミュニケーションをとれるようになってもらいたいですね。
——今日のイベントはいかがでしたか?
いままでずっとやってきて、伸びがすごく見えてきているなという実感があります。子ども自身も、「なにかをやったら伸びる」ということを感じているのだと思います。スピーチ時間や発表内容にしても、かなり成長を感じられるので、それはすごくうれしいことですし、はじめの方は講評を聞いてもよくわからないということがよくあったのですが、最近はすごく真剣に聞いていて、「ああ、なるほど」というような反応が返ってきますね。それから、次に活かそうという姿勢が見えるので、すごくい良いと思います。こちらも見ていて、「ここを集中的にやった方がいいな」と思うところは次に取り入れるようにしています。
——今後の展望をお訊かせください。
今後、「ディベート課」として、塾のようなものを開けたらいいなと思っています。学校のようにに30人全員集めてというのは難しいので、塾のように来たい時に来られて、ひとりでも参加できるというような雰囲気の方が来ていただけるのかなと思っていますので、英語ディベートをマスターするために、すごく大事な力が身に付くと思います。
普通の英会話でも話せるようにはなると思いますが、プレゼンテーション能力というのはつかないので、ディベートのユニークさを大事に、子どもたちが苦手意識なく英語で会話できるようになってくれたらいいなと思っています。学校にも今行っているのですが、この事業はずっと継続していきたいと思っています。実際、子どもたちからも「来年も参加するから!」という声をいただいています。
どのグループも、終始白熱していた本イベント。
“英語でコミュニケーションをとる”というだけで難しいはずなのに、子どもたちは“英語を使って自分の意見を正確に伝える”というハイレベルな分野に挑戦していた。
そんな彼らからは、「もっと上達したい」「この経験を将来に役立てたい」という向上心あふれるコメントが多数寄せられた。
コメントのなかでも言われているように、これから日本はますます国際化社会になっていくだろう。その時代にのるためには、“英語でコミュニケーションがとれること”は必須項目になるだろうし、“自分の意見をもつこと・言えること”がますます求められていくことだろう。
しかし、このイベントで得られるのは、単にディベート能力の向上だけではない。
そもそもディベートは、“自論で相手を論破する”という、“勝ち負け”の競技なのだが、現場では、いわゆる敵チームの意見を理解しようと真剣に耳を傾けていたり、(もちろんルール違反ギリギリなのだろうが)時には自分たちが不利になるかもしれないにも関わらず、相手チームに協力する姿勢を見せる場面があったりと、“勝ち負け”をも超えたコミュニケーションがなされていたのだ。
こういう場面に出くわすと、このイベントが“豊かな人間形成を築いていくための教育の一環”として、ますます広がっていって欲しいと思わずにはいられないのだ。
インタビュー・文・写真/無畄井 千恵