わかりやすいディベートのしくみ 「④ふさわしくない定義」 

この記事を書いた人✐横山悠規 

この記事はシリーズものです。過去の記事は下記リンクから。

「①ディベートの分類」
「②ディベートで成長するための心構え」
「③効果的な定義の仕方」

シリーズの目的

・「英語ディベートが苦手…」
・「英語での発言に自信がない…」
・「大会に向けて練習したい…」

そんな皆さんの悩みを解決するために、このコラムを書き始めました。

このコラムでは、ディベートにおける各スピーカーの役割や、各スピーチに含むべき内容とアドバイスについてお伝えしていきます

第3回では「効果的な定義の仕方」についてお届けしました。第4回では「ふさわしくない定義と、それをされたときの対処法」について見ていきます。

ふさわしくない定義の例

定義は議論の焦点を肯定側・否定側が共通認識として持つために行うもの、と前回お伝えしました。言い換えると、この目的から外れた定義は「ふさわしくない定義」となってしまいます。ふさわしくない定義には以下のような種類があります。

1.正当な理由なく議論を狭める定義

ディベートは社会全体を良くするために行う、という大前提があります。その中で、「この学校のみに限る」や「10年後に実施する」といった場所や時間、対象の制限を理由なくかけることは良くありません。肯定側が不当に有利になる、または議論が狭くなるからです。議論が狭くなると、メリットもデメリットも限定的になってしまいます。

このディベートでは 『宿題』を夏休みの課題のみに制限します!

(なんで夏休みだけ?それって私たちに不利にならない…?)

2.論題の意図が変わる定義

論題には策定者が定めた意図があります。例えば、“Homework should be abolished” には「宿題を廃止すべきか、継続すべきか」という意図があります。この意図と異なる議論になるような、論題の意図が変わってしまう定義もふさわしくありません。

ここでは学校の先生が作成するものを『宿題』とし、市販のドリルなどは除外します!

(あれ、それだと「宿題は必要かどうか」というより「誰が宿題を作るべきか」って議論にならない…?)

3.議論の余地を無くす定義

定義によって論題を自明の理としてしまう、つまり「あれこれ説明する必要のない明白な道理とする」ことは、議論の余地を無くすという観点からふさわしくありません。

『宿題』を出さなかった場合、体罰を伴うものとします!

(え、体罰は賛成できないから、反対しかできないじゃん。その定義だとディベートにならないよ…)

効果的な定義の基準として、“better debate principle” (より良いディベートの原則)というものがあります。どとらか一方を有利・不利にするための定義ではなく、「より良いディベートにするためにどこを共通認識とすべきか」という観点から定義を行いましょう。

定義への異議申し立て

もし、肯定側が不合理な定義をしてきた場合、否定側はどうしたら良いでしょうか。肯定側から納得がいかない定義をされたとき、否定側最初のスピーカーは、“Definitional Challenge” と呼ばれる定義への異議申し立てができます。”Definitional Challenge” を含めた否定側1番目のスピーチは、以下の5つの手順で行います。

  1. 肯定側定義の概要と、その定義が適切でない理由を述べる
  2. 新たな定義を提案する
  3. 新たな定義が適切な理由を述べる 
  4. ジャッジが肯定側の定義を受け入れたと仮定して、肯定側立論へ反論を行う。
  5. 否定側が新たに提示した定義をもとに、否定側立論を行う。

ディベートの大会によっては、Definitional Challengeが適切であるとジャッジに認められた場合、自動的に否定側が勝利となる、というルールがあります。しかし、ジャッジがそのDefinitional Challengeを評価するかどうかはディベート終了後まで分かりません。そのため、どれだけ不合理な定義であったとしても、必ず5つのステップを行うようにしましょう。

日常のコミュニケーションにおける「定義」

「定義」をすることは、ディベートだけではなく、日常のコミュニケーションにおいても役立ちます。

例えば「優先するべきタスク」について話している時、優先されるべきタスク、その理由、取り組み方など、具体的に説明をし、共通理解を促す必要があります。また「新しいアイデア」についても、アイデアの特徴、今までのアイデアとの相違点・共通点などを具体的に説明をする必要があります。定義が曖昧なままでは、勘違いや解釈の行き違いが起こる可能性があります。

定義はスムーズなコミュニケーションにおいて必要不可欠な要素であり、定義をうまく使いこなせれば、コミュニケーションもより上手になるでしょう。

定義づけの練習方法

定義の練習方法としておすすめなのは、「英単語を英語で説明する」というものです。

例えば、身近な単語である “Smartphone” は “an electronic gadget that has functions of a personal computer, a phone, and a payment terminal for various IC cards, etc.” と説明できます。

また、抽象性の高い単語、例えば “freedom” は “a state of being free from physical and psychological constraints where one can make autonomous decisions on his/her own actions.” のように表現することができます。

このように、身近な単語から抽象的な単語へとレベルを上げて練習できます。この定義づけの練習は、語彙を増やす際にも役立ちます。日本語の対訳を覚えるのではなく、その単語を英語で説明することで覚えてみると、自分のものにしやすいです。

“You don’t know what it is unless you can clearly explain it in your own words.”「自分の言葉で説明ができないことは本当の意味で知っているとは言えない」とよく言われます。皆さんが知っている英単語を一つ思い浮かべ、英語でその単語の意味を説明できるかどうか試してみましょう。

今回は「ふさわしくない定義」をテーマにお送りしました。

次回のテーマは「主張の文章構成」についてです。お楽しみに!