わかりやすいディベートのしくみ 「③効果的な定義の仕方」 

この記事を書いた人✐横山悠規 

この記事はシリーズものです。過去の記事は下記リンクから。

「①ディベートの分類」
「②ディベートで成長するための心構え」

シリーズの目的

・「英語ディベートが苦手…」
・「英語での発言に自信がない…」
・「大会に向けて練習したい…」

そんな皆さんの悩みを解決するために、このコラムを書き始めました。

このコラムでは、ディベートにおける各スピーカーの役割や、各スピーチに含むべき内容とアドバイスについてお伝えしていきます

第3回は「効果的な定義の仕方」についてお届けします。

定義の意味と目的

「定義」は肯定側一人目のスピーカーが果たす役割のひとつです。「このディベートが何についての議論なのか」を明確にするために、論題にある単語の意味を説明することを指します。

論題で使用されている言葉の意味(捉え方)が肯定側と否定側で異なっている場合、議論がかみ合わず、平行線を辿るディベートなってしまう可能性があります。そのような議論を避けるために、定義を行う必要があります。定義の目的を一言で表すと「議論の焦点を肯定側・否定側・ジャッジが共通認識として持つこと」です。

定義をすべき表現の数に制限はありませんが、立論のスピーチではポイントの説明がメインなので、定義に時間をかけ過ぎないようにし(目安15~20秒)必要な語彙のみ説明するようにしましょう。

定義の仕方

それでは、実際の定義の仕方を見ていきます。①「定義すべき単語の見極め方」、②「効果的な定義の仕方」の順に見ていきましょう。

①定義すべき単語の見極め方

まずは定義すべき言葉を探します。論題を読み、「『誰が』『何を』『どうする』論題か」と分解したとき、一番曖昧(広義)な単語を見つけてください。

※『誰が』に関して、日本で行うディベートで “We would introduce casinos in Japan” のような論題があった場合、”we” が指すのは基本的に「日本政府」です。そのため、論題に “we” とあった場合、定義をする必要は特にありません。

以下の論題例を読み、自分ならどの単語を定義するか考えてみましょう。

We would abolish zoos. (動物園を廃止すべきだ)
We would abolish homework.(宿題を廃止すべきだ)
We would abolish the death penalty.(死刑制度を廃止すべきだ)

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②効果的な定義の仕方

次に定義の文を考えていきます。”We would abolish homework.” という論題を例に見ていきましょう。

“homework”

先のクイズにも触れたように、この論題で最重要な言葉が “homework” です。宿題が指すものは広く、問題集から予習・復習、読書感想文やボランティアまで、実に様々に解釈できます。このような広義な単語はしっかり定義をすべきです。以下の例を見てみましょう。

“In this debate, ‘homework’ refers to the drills, exercises, and essays to be finished outside of classrooms assigned by teachers at school.” 「このディベートでは、『宿題』とは、学校の先生から課されるドリルや練習問題、エッセイ等、教室外で取り組む課題を指す。」

こう定義することで「宿題」が「先生から課される教室外で取り組む課題」であることが明確になりました。

“abolish”

この論題で次に大切な言葉は “abolish” (廃止する)でしょう。何をもって「廃止」とするのかも、人によって変わってくることが多いです。例えば、以下のような定義が考えられます。

“In this debate, ‘abolish’ refers to an enforcement of a rule that prohibits an act of giving assignments related to school subjects.” 「このディベートでは、『廃止する』とは教科に関連した課題を課すことを禁止するルールの施行を指します。」

この定義により、「廃止」とは「課題を課すことを禁止するルールの施行」という共通認識になりました。

“We”

繰り返しになりますが、日本で行うディベートの場合、“we” が指すものは基本的に「日本政府」です。そのため、定義をする必要は基本的にはありませんが、あえて定義をするならば、以下のようになります。

“In this debate, the word ‘we’ refers to the Japanese government. Therefore, the decision will affect all public schools under the control of the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology.” (「このディベートで言う『私たち』が指すものは日本政府です。よって、今回の決議は文部科学省管轄の全ての公立学校に影響を与えるものとなります。」)

今回は「効果的な定義の仕方」をテーマにお送りしました。

次回のテーマは「ふさわしくない定義とその対処法」についてです。お楽しみに!