即興型英語ディベートについて

パーラメンタリーディベートについて

 本プログラムで取り扱う即興型の英語ディベートは、世界で活用されているディベート形式の一つであるパーラメンタリーディベートをもとに、授業や研修などの限られた時間で導入が可能なディベートスタイルとしたものです。

 一つの論題に対し、肯定と否定チームに分かれ、各々のチームが第三者を説得させる形式をとります。論題は、社会、政治、倫理、環境、国際問題など多岐にわたり、国際的に活躍できるグローバル・リーダーに必要な素養を身に付けます。ディベートをする者は、肯定か否定チームのいずれに属するかを自ら選ぶことはできず、自身の意見とは異なる観点からの主張も考えなければならないことがあります。論題が発表されてから15分〜20分程度の短い準備時間の後、ディベートを開始します。

事前準備型と即興型

いかに準備するかが大切な「準備型」

 準備型のディベートでは論題が事前に与えられ、本番までの多くの時間を準備に費やすことができます。説得力のある証拠や理由付けをいくらでも調べたり、考えることができ、本番で話す原稿をしっかりまとめることも可能です。「準備が8割」と言われる程、準備型ディベートでは準備段階の出来が本番のパフォーマンスを左右します。

 この型のディベートでよく陥りがちな罠が、「事前準備のおかげで英語をかなり使いこなせているような気分になるが、いざ外国の人との交流会に参加した時になかなか話せない」ということです。準備型のディベートでは、準備したものを読んでいるだけになりがち。ですが「読むことと話すことは、全く違うこと」なのです。

現実に即した力が付きやすい「即興型」

 一方、即興型のディベートでは論題は毎回変わり、準備時間も15分、30分など限られているため、その時自分の持っている知識のみを使うことになります。そして一人7分間(学校授業スタイルでは3分間)のスピーチの時間が与えられ、その中で自分の力を出し、話さなければなりません。はじめのうちは、最長でも3分くらいしか話せないこともしばしばですが、ディベートは話さなくては勝てないので「頑張って話そう」という気持ちになります。この気持ちが大きな成長に繋がります。普通の英語教育や準備型ディベートでは難しいでしょう。

 また、ディベートは勝ち負けが必ず決まります。「負けたくない」という気持ちそのように追い込まれる状況が英語力の向上に繋がります。

身につく力

人の心を動かす力

 準備型においてよくありがちなのは「下手に準備していったため、”用意した話をしなきゃ”ということにとらわれて話のリズムが悪くなる」ということです。「準備したものを読む」ことが目的になってしまうと、相手との会話のやり取りはうまくいきません。独り言をつぶやいているように見えてしまうかもしれません。

 一方即興型は、好感を持って受け入れられる話し方をしているか、間の取り方・話のリズムは心地よいかなど、感情に訴える要素も大切です。いくら論理的に正しくても人の心を動かすことができなければ勝てないという点で、非常に実用的と言えるのです。

豊富な知識と知識の応用力

 英語が流暢に話せることも勿論大事ですが、論理構成や話の展開などがしっかりしていれば十分に勝機があるのもディベートの特徴です。内容で負けないようにするためには、毎回変わる議題に対応できる知識量と知識の応用力が必要になります。国際的な論題や政治的な論題など、テーマは多岐にわたります。例えば多くの日本人が弱いであろう宗教関係。他の国、例えばマレーシアなどは多宗教国家でもあるため、はじめから知識も豊富で圧倒的な有利があります。日本人にはそもそも何を言っているのかわからず、自分の知識のなさを思い知らされることもあるのです。

 このように、中には自分の興味がない論題に当たることもありますが、その論題に当たった時にディベート後、「わからなかった点はどこか」「その知識をどこでどのように使えばよかったか」をしっかり考え復習することによって、知識は増えていきます。経験の中で培われた知識は、そうでない知識に比べて記憶に定着しやすいのです。