新しい思考法
こちらはとある駅です。
ここでは階段の利用者が少なく、エスカレーターがいつも混雑しているという問題がありましたが、 ある解決策によって階段の利用者が増えたといいます。
―どのような方法だと思いますか?―
―この解決策を作り出したあるメソッドをご紹介します。
デザイン思考とは?
米国シリコンバレー発祥のイノベーション手法で、人々の本当のニーズが何かに気付き、創造的なアイデアで問題を解決するメソッドです。
ユーザーのニーズを分析し、今までになかった創造的課題解決力を生み出していただきます。さまざまな企業で新商品の開発、マーケティング手法の考案、業務効率の高いオフィスデザインなど、いろいろな課題解決に活用されています。
なぜデザイン思考が必要なのか?
さまざまな製品やサービスが溢れる昨今、人々の心を掴むのは独創的で斬新なものだけではありません。
誰がどのようなことで困っているのか、そして人々が本当に望むものは何なのかを見極めて、人々が求めているものを提供することが重要です。
消費者の視点に立ち、彼らの抱える困難や不満としっかり向き合うことで、現代に必要とされるモノを生み出すことができます。
デザイン思考は今の時代に求められるクリエイティブな思考を促します。
デザイン思考の5つのステップ
デザイン思考は5つのステップ通してデザインしていきます。ターゲットとなる人々のニーズ分析をもとに、課題解決方法のプロトタイプを作成します。その後実際に使用してもらい、フィードバックを反映し改善する、という過程を繰り返しながら新たなイノベーションを生み出します。
では、このデザイン思考の手法を使って、駅の階段がどのように生まれ変わったのか、そのイノベーションの例を、各ステップを追いながら見ていきましょう。
ステップ1:共感
デザイン思考のステップ1では、人々の行動を観察し、その気持ちに寄り添い、共感します。観察と分析を徹底的に行うことで、人々の潜在的なニーズや問題を発見することができます。階段の例ではどのような意見をみつけられるでしょうか。
(例)階段利用者:「疲れそうだなあ…」「苦しいのは嫌だ」 エスカレーター利用者:「ただ乗っているだけは退屈だ」「歩いた方が早いのでは?」などの声があったと仮定します。
ステップ2:問題定義
デザイン思考のステップ2では、解決すべき問題をみつけ定義します。
今回の例では「階段を利用するのが苦痛である」、「エスカレーターを利用するのは楽だ」という認識を人々が持っていることが問題だと定義し、「階段を使うと楽しい」「エスカレーターを使用するのは退屈だ」という認識にどのようにしたら変えることができるか、が課題となります。
ステップ3:創造
デザイン思考のステップ3では、固定概念に囚われず柔軟な発想で課題解決の方法に関するアイデアを考えます。今回の場合、「苦痛」を「楽しい」という認識に変えるにはどのような考え方が必要でしょうか。
(例)①ゲームやスポーツを取り入れてみる。
②音楽を取り入れてみる。
ステップ4:プロトタイプ
デザイン思考のステップ4では、アイデアを素早く形にし、試作品をつくります。
今回はステップ3の②を用い、音楽の要素を取り入れてみます。
ステップ5:テスト
デザイン思考のステップ5では、実際に作成したプロトタイプをユーザーに使用してもらいフィードバックを受けます。それをもとに再度プロトタイプを作成したり、もう一度観察から始めたりと、試行錯誤を繰り返します。
いくつかの検証を試した結果、この駅ではピアノの鍵盤に見立てた階段を設置したことで階段の利用者が増え、エスカレーターを本当に必要としている人がスムーズに利用できるようになりました。こうしてエスカレーターがいつも混んでいるという問題は解決したのです。
今回は建造物や都市のデザインに活用した例でしたが、こうした物理的なデザインからスケジュール作りや会議の手順、新サービスのデザインまで、あらゆる問題を解決するためにデザインシンキングを役立てることが可能です。
デザインシンキングは単なるクリエイティブな思考を促すだけではなく、表出していない人々の抱える問題を解決しながら、サービスや商品の価値を拡大させることができるという点で真価を発揮します。
研修の流れ
Part1 共感
消費者動向のデータを用いて、共感に求められる要素を理解する
Part2 問題定義
消費者の心理分析を行うことで、問題定義の要点を明確にする
Part3 創造
身近な製品を改善する案について意見を出し合い、創造的な思考を実践する
Part4 プロトタイプ
アイデアを実際に形にし、主体的に課題解決法を創出する
Part5 テスト
フィードバック内容を分析・解釈し、改善につなげるステップを体感する